FC2ブログ

海野雅威の気まますぎるdiary

嘘の世界

「こんなにもこだわってやっています!」
というのは、自然に現れてくるものであって本来主張するものではない。
公言するのは、逆に出来ていない事の証明のようにも思えてしまう。

例えば、
「俺はスイングに命をかけています!」
と威勢のいい事を公言するミュージシャンがいたら、その人はスイング出来ていない可能性が高いかもしれない。
なぜならば、本当にスイングする人はそんな事を言うまでもなく(言う必要など全くなく)、ごく当たり前に自然にスイングしているはずだから。

「私はこんなにジャズを愛している!」
「練習をこんなにやっています、練習って楽しい!」
「ここの部分にとても工夫を凝らしてアレンジしています!」
「厳選に厳選を重ねて吟味しております!」

と、音楽に限らず日常的に見る、宣伝文句だったり、褒められたい事が窺える他人への自己アピール。
しかし、アピールして公言するほどにそれは逆に出来ていない証拠。その対象との間に決して縮まる事のない大きな距離を感じてしまう。まず言う事がはっきり言ってダサい。口より行動、説明より結果。静かにコツコツ、誰にアピールするでもなく、苦労、過程は見せないスマートさはどこへ行った。ツイッター、インスタ用の架空世界だけの自分、演じ演じられ騙し合い、嘘の世界に生きる虚しさ。





PageTop

幸せの価値観

何かしらの違和感を感じる言葉を耳にするとき、本末転倒によるところが多い。

先日も象徴的な出来事があった。とても熱心にライブに来てくれる、心底自分の音楽を好きでいてくれる方が、その熱い気持ちゆえにこう切り出した。「なんであなたではなくて〇〇氏が活躍し世間で評価されているのか納得がいかない。もっと自分で実力をアピールして有名になってほしい。」と怒り気味になぜか直接訴えてこられる。しかし、本人にそんな事を言われてもこちらも困ってしまうのである。なぜなら当たり前の話、有名になる為に音楽を演奏しているわけではないから。日々の活動を地道に積み重ねて自分に正直に進んでいく中で、「結果的に」世間に認められて日の目を見る事があるかもしれないし、ないかもしれない。この会話で何となく、「あなたは不幸ですね。」と言われているように少し感じてしまった。でも幸せの価値観って他人が勝手に決めるものではない。音楽がただ好きで始めたはずのミュージシャンが、有名になる事がその目的になってしまうとそれはまさに本末転倒になってしまう。自己アピールしてのし上るという考えも自分とはズレている。

以前から次のような価値観、行動に疑問を持っている。

*知名度至上主義、勝ち組、負け組というような貧相な発想。
*自己アピールに長け世渡り上手でいる事の推奨。特に自分よりも立場が上や、利になる人に媚びへつらう姿勢。
*プロとアマチュアの線引き。プロの方が上だというような価値観。
*地方より都市が優れているという発想。例えばアメリカでジャズならば、ニューヨークが最高で、地方は下と見るような価値観。

物事の幸せや、優劣の価値観がステレオタイプ化されると流されてしまう。それぞれの素晴らしさ、幸せがあるのに。

この点、僕は敬愛するDick Morganに学んだ事が多い。
ワールドクラスのピアニストがなぜ地元ワシントンDCやメリーランド州周辺のみに留まったのか。それは家族を大事にして、地元ファンに愛されていたから。その事はかつて彼が演奏した同じ場所で彼のバンドメンバーと演奏するという稀有な機会を通して身をもって肌で感じた。愛する家族、信頼するバンドメンバー、熱烈に愛された地元ファンのすぐ近くで演奏し続けた偉大なDick Morgan。こんな幸せな事があるだろうか。

ミュージシャンの知名度やビジネス成功への執着は、音楽を自分の功名心の道具として利用しているとも捉えられる。
音楽に対しそんな無礼であれば、その仕打ちは必ずやってくる。
それはその人からはピュアな音楽は決して生まれない事だと信じる。

例えば、見受けられるのはメッセージや感動の押し売り的な演奏。つまりお客さんを感動させる為に演奏しているミュージシャン。「えっ、全く問題ないじゃん、ミュージシャンの鏡では?」と思ってしまう人がいたら本当に危ない。
なぜならこれは音楽に集中していない上に、お客さんを下に見て上から目線で感動させてやると舐めているから。一部の聴衆は騙せても、その事に気がつく人も少なからずいる。これも本末転倒の一例。本来は一心不乱に心から演奏する中から聴衆が何かを自ずと感じ、感動が「聴衆の心から」自然と生まれるもの。それぞれが違う感じ方で受け取る。だからこそ立体的な深み、意味も増す。こういうように聴いて欲しいという一方向の決まったメッセージや、感動を与えたいなどというのは所詮演奏者のエゴ。だから、よく見せる、安っぽい感動を押し付けるような演奏は不自然な偽物で、押し付けがましい。個人的にはこういった演奏をしてしまうミュージシャンは、結局音楽が好きではなく、自分が好きなだけなのかと思えてしまう。

音楽だけでなく、世の中、目に見える作られた価値観や結果のみにとらわれすぎのように感じる。例えばグラミー賞を狙っていますと恥ずかしげもなく堂々と宣言してしまうミュージシャン、それを凄い頑張れと応援するようなファン。正直恥ずかしくなってしまう。本末転倒はいたるところに転がっている。

一見目に見えず、聞こえない、でも大切な物事の本質を大事にしていきたい。

PageTop

10周年!!!

今月6月19日は渡米してちょうど丸10年でした!!!
(当初は渡米生活は3年ぐらいになると思っていたような、、、)
まさにあっという間、光陰矢の如し。渡米した蒸し暑い快晴の日がつい昨日のことのよう。でも同時に10年ひと昔とも云います。それだけまた歳も取りました。日本で10年活動後に海を渡ったのでイーブン。まだまだの自分ですが、おかげさまでミュージシャン生活20周年目を迎える事ができました。何周年など普段は全く気にしませんが、右も左もわからず渡米した日を思い返しながら、一区切りとしてこの6月を過ごしていました。すると不思議な事に渡米直後に知り合った仲間でしばらくぶりのミュージシャンとの演奏の機会があったりと面白い縁、一回りしたループのようなものを感じます。

ところで最近はライブの記憶、仲間、まずはNYのミュージシャンの顔が思い起こされるようになっています。これは何ともいえない切なさも。お世話になった日本の仲間、先輩とご無沙汰しており、この10年ほぼ一緒に演奏できていないのは、日本で育てられた自分にはやはり寂しいものもあります。渡米したばかりの頃はもちろん頻繁に一時帰国することには意味を感じられなかったのですが、さてこれからはどうでしょう。日本でかつての旧交を温める機会、まだ出逢っていない若い才能に触発されるような演奏の機会なども実現できたらいいなー。

この10年で見え方、感じ方も以前とは変わり、しかし何も変わっていないと思うものも確かにあるように感じます。よくも悪くもとてものんびり屋の自分ですが、一歩ずつゆっくりと積み重ねた上で感じられるであろう次の新たな可能性にワクワク。これもいつも変わらず応援して頂いている方、渡米前から見守っていてくださる方、皆さんのおかげです。何事にも真剣、でも肩肘張らずリラックスしつつ楽しんで行けたら最高です。気ままにこれからもお付き合いの程宜しくお願いします。



PageTop

変わってしまうもの、決して変わらないもの

先日Village Vanguardのオーナー、Lorraine Gordonさんが95歳でとうとう旅立たれてしまった。歴史を積み重ねてきたジャズクラブ、その生きる伝説であった偉大な方を失い、Vanguardはもう全く違う雰囲気になってしまうのも残念ながら時間の問題だと思われる。Rudy Van GelderさんのいらしたVan Gelderスタジオと、彼亡き後のスタジオでは何か全く違う大きな喪失感、空虚感を感じてしまったように。人の意志や精神は建物など建造物にも確かに宿るが、いくら歴史的価値のある建物でもその人が存在していたからこそだという事実は疑いようがない。大事なのはそこに生きる人。

Lorraineさんは週初めの最初のセットに入り口近くのいつもの席で必ず聴いてくれていた。彼女がいるとその存在感で店の雰囲気がピリッとしまっているのが名物だった。とても気難しくて怖いと恐れられているような事を言う人も多くいるけれど、自分にとってはまったくそういった印象はなかった。演奏後に興奮した表情でハグをしてくれて、"You are wondeful pianist!"とあたたかいお言葉をかけてくださり、その言われているようなイメージと全く違った。とてもよく似た事がRudy Van Gelderさんとのレコーディングでもあって、頑固でほとんど褒めたりしない方だという方が満面の笑みと共にハグしてくれた思い出がある。数々のジャズの歴史に残る偉大なミュージシャンと直接の友人であり、仕事をしてこられた方から頂いた賛辞は特別な意味を持ち心に残っている。幼い頃から自然とジャズに親しんでこられたとはいっても、それでも時には「日本人の自分がジャズを演奏する意味は?」などと頭で考えてしまうような事もあった。しかしその温かいお言葉のおかげで、自分の音楽でも人種を超えて感じてくれる人には伝わる、特にこれ以上ジャズの耳が肥えた方はいないと言うほどの本物の方に特別に喜んでもらえた経験は「あなたの信じる音楽をひたむきにこれからも磨き続けて行きなさい」というような大きな勇気と励ましを頂いたように感じている。

Lorraineさんも、Rudyさんも、恩師Hank Jonesにしても90歳を超えても、最晩年まで情熱を輝かせてご健在で、まさに音楽に生きた方であった。そして自分のような日本から渡ってきたジャズピアニストでも決して差別したり見下したりせずに、大きな愛を持って接してくださった。その奇跡とも言える宝物のような心の触れ合いの時間に改めて感謝。Lorraineさん、どうぞ安らかに。

PageTop

近況、11月日本ツアーのお知らせ!

ブログをご覧の皆さんご無沙汰しております。
日々のライブ情報は主にこちらで更新しておりますので、ご覧ください。

http://www.tadatakaunno.com
https://www.facebook.com/tadatakaunnojazz/

さて、こちらブログではすっかり更新を怠っておりましたが、久々に近況報告です。

9月21日にベーシスト吉田豊とDUOアルバム「DANRO」が発売になりました。
普段から感じている事ですが、ミュージシャンは録音を残す為に活動をしているわけではなく、日々のライブがその実態です。その中から偶然生まれる、いわば副産物が録音であると個人的には思います。ですから、次から次へ手を替え品を替え、毎年録音するというような企画物はあまり意義を感じず、寡作であっても十分だと思っています。(だから一つ一つに心を込めた思い入れがあるのでぜひご購入くださいね!)
今回の録音は、15年活動を共にする中で生まれた信頼関係やチームワークを残しておきたいという、豊さんとお互いの思いが一致、自然な形で実現しました。自分達ならではの音楽が少しづつ形になっていたらいいなーという思いがあります。渡米以来たくさんの素晴らしいミュージシャンと共演の機会がありましたが、豊さんと演奏する時にのみ感じる特別なチームワークがありずっと大切にしてきました。今後もさらにそれを磨いていきたいと思います。長年応援してくださった方に心から感謝申し上げます。特にこのDUOは北海道で培われてきて、各地での皆さんとの交流がなければ生まれなかったものでもあります。11月後半にレコ初も(今回は関東のみ)ですが予定されていますので、ぜひお越しください!

*現在Jazz Japan、Jazz Life、ジャズ批評など最新号にこの新作に関してのインタビューやレビューがございます。ぜひそちらもご覧ください。

さて、最近はたくさんの貴重な経験を得ました。

6月の終わりにJimmy Cobbトリオで新作録音をVan Gelder Studioで行いました。
伝説のRudy Van Gelderさん(91歳!)にお会いでき、そのお人柄に触れ大変感動しました。僕はジャズを子供の頃から聴いてきましたが、その聴いてきた数え切れないほど多くの名盤を録音したRudyさんにお会いでき、そのスタジオであのピアノで自分がまさか演奏し録音できるなんて思ってもみなかった事でした。氏はその後他界され、奇しくも氏にとって生涯最期のレコーディングとなってしまいました。お会いできて本当に光栄でした。偉大な方の人生の最後でお会いできたというのは、師Hank JonesやFrank Wessとも重なります。とても悲しく、そして感謝の気持ちでいっぱいです。

9月にはHassan Shakur, Chuck Riggs両氏の推薦により初めてScott Hamilton Quartetでの演奏がありました。朗々とメロディーを歌い上げスイングするScottとの演奏を心から楽しみました。往年のジャズファンが集まった会場、お客さんは最近のスイングしないジャズのスタイルに嫌気がさしている方も多く、、伝統的であり常に新しい、シンプルで奥深いScottの音楽ファンの方が泣いて喜んでおられた感動的なコンサートでした。

また、先日は初めて香港とマカオに行ってきました。Roy Hargroveのバンドのピアニストとして初参加しました。これは前述のJimmy Cobbトリオのレコーディングの際にゲストで数曲Royに参加してもらい、その時に彼が気に入ってくれた事、またレギュラーメンバーのJustin Robinson、Sullivan Fortnerの推薦もあり実現しました。黒人バンドの代名詞であるこのバンドで、初めての日本人メンバーとなり責任も大きいですが、メンバーが信頼してくれている事に大きな喜びを感じました。この出来事もRudyや、Scottと同じく、昔から憧れていた方とまさか自分が演奏や仕事をする事になるとは思ってもいなかったことであり、まさに夢が叶った大きな日でした。リハもなし、曲もその時までわからない緊張するステージでしたが、天才としか表現できないリーダーの音楽への愛、優しさを感じ学ぶ事も多い最高の機会でした。

そして、11月はいよいよ日本ツアーが始まります。

2010年は、Hassan Shakur(b), Jimmy Cobb(ds)
2011年は、Jimmy Cobb(ds)Quartet, Eddie Henderson(tp), Yonatan Levi(b),
2014年は、Hassan Shakur(b), Jerome Jennings(ds)
2015年は、Essiet Essiet(b), Jonathan Barber(ds)

と今まで一時帰国ツアーを行ってきました。

そして、2016年の今年はベーシストJames CammackとDUOです!
JamesとはニューヨークのMezzrowなどでDUO演奏しています。素晴らしい驚異的なベーシストです。巨匠Ahmad Jamalが30年以上愛してやまない彼の柔軟で強靭なベースをじっくり聴ける貴重な機会です。予定調和ではない自由な精神がジャズの一つの醍醐味でありますが、自分達でさえどうなるかわからない展開を特にJamesとのDUOで存分にお楽しみ頂けます。また、久しぶりの共演である河村英樹(ts)、西村和真(vo)氏をゲストにお迎えする楽しみも夜、そして吉田豊氏との「DANRO」発売記念ライブもあります。皆さまとお会いできるのを楽しみにしています。ぜひお見逃しなく!

★海野雅威&ジェームス•カマック スペシャルデュオツアー2016
海野雅威(p), James Cammack(b)

11/1 (火) 横浜市栄区民文化センター リリスホール
11/2 (水) 3 (木) 4(金) 神楽坂Glee
11/5 (土) 6 (日) 岡崎ジャズストリート
11/8 (火) 水戸自由が丘スタヂオ
11/9 (水) 大阪ラグタイム Guest: 河村英樹(ts) 
11/10 (木) 福山リーデンローズホール
11/11 (金) 下関東京第一ホテル Guest: 西村和真(vo)
11/12 (土) 福岡バックステージ Guest: 西村和真(vo)
11/13 (日) 横浜ファーラウト

★海野雅威&吉田豊「DANRO」発売記念ライブ
海野雅威(p), 吉田豊(b)

11/18 (金) 山野楽器銀座本店
11/19 (土) 熊谷Space1497
11/20 (日) 南浦和U3chi

【総合問い合わせ先】
www.tadatakaunno.com













PageTop