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海野雅威の気まますぎるdiary

変わってしまうもの、決して変わらないもの

先日Village Vanguardのオーナー、Lorraine Gordonさんが95歳でとうとう旅立たれてしまった。歴史を積み重ねてきたジャズクラブ、その生きる伝説であった偉大な方を失い、Vanguardはもう全く違う雰囲気になってしまうのも残念ながら時間の問題だと思われる。Rudy Van GelderさんのいらしたVan Gelderスタジオと、彼亡き後のスタジオでは何か全く違う大きな喪失感、空虚感を感じてしまったように。人の意志や精神は建物など建造物にも確かに宿るが、いくら歴史的価値のある建物でもその人が存在していたからこそだという事実は疑いようがない。大事なのはそこに生きる人。

Lorraineさんは週初めの最初のセットに入り口近くのいつもの席で必ず聴いてくれていた。彼女がいるとその存在感で店の雰囲気がピリッとしまっているのが名物だった。とても気難しくて怖いと恐れられているような事を言う人も多くいるけれど、自分にとってはまったくそういった印象はなかった。演奏後に興奮した表情でハグをしてくれて、"You are wondeful pianist!"とあたたかいお言葉をかけてくださり、その言われているようなイメージと全く違った。とてもよく似た事がRudy Van Gelderさんとのレコーディングでもあって、頑固でほとんど褒めたりしない方だという方が満面の笑みと共にハグしてくれた思い出がある。数々のジャズの歴史に残る偉大なミュージシャンと直接の友人であり、仕事をしてこられた方から頂いた賛辞は特別な意味を持ち心に残っている。幼い頃から自然とジャズに親しんでこられたとはいっても、それでも時には「日本人の自分がジャズを演奏する意味は?」などと頭で考えてしまうような事もあった。しかしその温かいお言葉のおかげで、自分の音楽でも人種を超えて感じてくれる人には伝わる、特にこれ以上ジャズの耳が肥えた方はいないと言うほどの本物の方に特別に喜んでもらえた経験は「あなたの信じる音楽をひたむきにこれからも磨き続けて行きなさい」というような大きな勇気と励ましを頂いたように感じている。

Lorraineさんも、Rudyさんも、恩師Hank Jonesにしても90歳を超えても、最晩年まで情熱を輝かせてご健在で、まさに音楽に生きた方であった。そして自分のような日本から渡ってきたジャズピアニストでも決して差別したり見下したりせずに、大きな愛を持って接してくださった。その奇跡とも言える宝物のような心の触れ合いの時間に改めて感謝。Lorraineさん、どうぞ安らかに。

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